子どもへの読み聞かせは1日何冊が良い? 絵本の専門家・ふわはねさんに聞いてみた

ふわはね

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子どもの心の成長にかかせない絵本。
しかし、
「まいにち読んであげなきゃ」「1日○冊は読まないと」と、日々の読み聞かせがプレッシャーになってしまっているママ・パパも多いのではないでしょうか。

絵本講師として、そして2人の娘さんのお母さんとして、今までたくさんの絵本の読み聞かせを行ってきたふわはねさんに、思い出の絵本や、絵本の読み聞かせの際に心掛けたいことなどを教えていただきました。

「絵本」を仕事にしたきっかけは?

ふわはねさんのご自宅でもある「絵本のアトリエ」 Ⓒ絵本のアトリエ

 

――「絵本のつなぎて」として幅広く活動中のふわはねさんですが、絵本や本屋さんといったものに興味を持たれたのはいつからですか?

本は子どものころから好きでした。

私の父は今85歳なんですけど、未だに毎日図書館に行くほど本が好きな人で。父の書斎や部屋には、いつも沢山の本があったんです。

私は父の部屋で図鑑や百科事典などを、パラパラめくって楽しんでいるような子どもでした。そういう意味では、本に囲まれて育ったのかもしれません。

ただ、絵本を読んでもらっていたという記憶はあまりなくて。

今、絵本の活動をしていても思うのですが、絵本って現物がそこに残ってないと、記憶にも残りにくいものだと思うんです。読んでもらった思い出と共に、本棚の中に絵本がある大切さを思います。

――では、絵本を仕事にしていこうと思われたのは、何がきっかけだったんでしょうか?

もともと子どもが好きだったので、子どもに携わる仕事がしたいと思ったのと、やはり本が好きだったこともあり、大学では児童文学を学んでいました。

卒業後は児童文学と関係のない職に就いたのですが、「子どもと携わりたい」という気持ちはずっと持っていて。結婚して子どもが生まれた1年後くらいに、たまたま新聞で絵本講師一期生の募集の記事を見かけて資格を取りました。それが現在の仕事に繋がっていると思います。

絵本を通じて感じた2人の娘の成長

ふわはねさんの思い出の絵本『いっしょに うたって!』 (ましませつこ絵/こぐま社)

 

――お子さんが生まれる前と後で、絵本への関わり方は変わりましたか?

そうですね。読み聞かせの中で子どもとコミュニケーションを取ったり、反応や成長が見えることに、絵本の面白さや、力を感じるようになりました。

――著書『えほんとりっぷ 全国絵本屋さんめぐり130軒』の中で、お子さんに読んだ絵本の話が出ていましたが、それ以外で特に印象に残っている絵本はありますか?

印象に残っているのは『いっしょに うたって!』(ましませつこ絵/こぐま社)という歌の絵本です。1ページごとに童謡の絵、歌詞、楽譜が載っていて、いつも子どもたちと一緒に歌っていました。

最初は絵本を開き一緒に歌っていたのが、そのうち子どもたちだけでページをめくって歌い出すようになりました。ピアノを習い始めると、絵本の中の楽譜を見ながら自分たちで曲を弾くようになって……。1冊で長い期間楽しめて、子どもたちの成長を見ることができた印象的な本でした。

今は2人とも大学生なんですが、音楽は続けていて、上の子は市の楽団に所属しハープや打楽器を、下の子は大学で吹奏楽部に所属しユーフォニアムを吹いています。

――2人のお子さんを育てる中で心掛けていたことを教えて下さい。

実際にできているかはわかりませんが、「優しくありたい」とは常に思っていました。

子どもが困ったときに相談できる親でありたかったので、子どもが失敗したり忘れ物をしても、頭ごなしに叱らないように心がけていました。

親が子を助けられるのは今だけだと思っているので、子どもから頼まれたことに対しても、できる限り応えるようにしています。

親が厳しすぎると子どもは自分を守ろうと嘘をつくと思っていて。自分の経験も含め、子どもにとって嘘をつかなくてよい相手でありたいなと思っています。

仕事でもそうですが、家族関係でも交渉の余地のある、相談のできる関係性が大切だと私は思っています。

家庭での読み聞かせで一番大切な事

ふわはねさんのアトリエに並ぶたくさんの絵本 Ⓒ絵本のアトリエ


――読み聞かせの活動もされているふわはねさんに、親子で読み聞かせをする際の絵本の選び方についてアドバイスをいただきたいです。

親が「これを読んであげたいな」と思う本を選べばいいと思いますが、子どもが自分で本を選ぶ体験も大切だと思います。

たとえば、月に1回ほど子どもと一緒に本屋さんに行って、「好きな本を選んでいいよ」と声をかけ、実際に子どもが選んだ本を買うんです。

「好きな本を選んでいいよ」と言った以上は、選んだものに対して「ダメ」とは決して言いません。つい何か言いたくなってしまうと思うのですが。(笑)

そこで大切なのが本屋さん選びです。このお店ならどの絵本を選んできても間違いないという信頼のおける本屋さんへ行くのがポイントです。

子どもと一緒に、お母さん、お父さんも1冊ずつ自分の本を買う。家族の時間としても、そういった機会があるといいなと思います。

――自分で選ぶ経験も大切ですね。夜の読み聞かせの時に、分厚い図鑑を持ってこられた経験があるのですが……

自由に選んでもらうと、こういうこともありますよね。親が困ってしまう場合は、何かしらの工夫も必要だと思います。おはなしの絵本の棚と図鑑の棚を分けて、「寝る前の本はおはなしの絵本の棚から選んでね」と声をかけてみるのもいいかもしれません。

――家庭での読み聞かせで、心掛けたほうがよいことはありますか?

親子が一緒に楽しむことが何より大切だと思います。

「こうしなければならない」という細かいルールは考えすぎず、「読んで」と言われたら笑顔で向き合う、飽きてしまったらそこで辞めるなど、子どもの気持ちに寄り添いつつ楽しめたらいいと考えています。

絵本の読み聞かせの良いところは、何かの片手間ではできないところだと思っています。子どもにとっては、親が自分とじっくり向き合ってくれる嬉しい時間になりますし、親も子どもに「本を読んで」と言われると、ちょっと嬉しい気持ちになりますよね。

「読んで」「いいよ」のやり取りに、その絵本の価値の半分以上があると思っています。なのであまり肩に力を入れすぎずに、「1日何冊読まなきゃ」とか、「寝る前に読まなきゃ」などと決める必要はないと思います。

何よりも大切なのは、大好きな人が自分のために読んでくれる。このかけがえのない時間だと思います。

(取材・文/nobico編集部)

えほんとりっぷ

えほんとりっぷ 全国絵本屋さんめぐり130軒 (ふわはね著、世界文化社)

絵本のつなぎて・ふわはね(内田祐子)が、一年半かけて足を運んだ、全国の絵本屋さんとその周辺情報を紹介する初の著書。 全国の絵本専門店、書店、絵本美術館、絵本カフェ、図書館、おもちゃ屋さんなど130軒と、旅の途中ぶらり散歩で訪れた施設30軒を紹介。 絵本のある生活を語るコラムも充実。 人気イラストレーター・絵本作家の布川愛子さんのイラストで楽しめる、旅のお供にぴったりの一冊。